『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』
https://m.media-amazon.com/images/I/61QII5Fv5BL._SY466_.jpg https://www.amazon.co.jp/%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E3%81%8B%E3%81%9F-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E5%AD%A6%E8%8A%B8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B5-55-1-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E5%81%A5%E4%BA%8C/dp/448051239X/ref=sr_1_28?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=FE5F92N0VUUQ&dib=eyJ2IjoiMSJ9.qElFUlhGGSY41QUyGymI_3Pnzdw_jHUrQTTs3_Ds1EvAvOHVK1bdYVaCNAuBaJov2KlFZC0ELtXGgddaLsXm2ajnx64IId8mn-FmHrf2ypAS52pfN8aCD_tMKhjXaxBl8PPt9Eyk0fQzlaAoz6up6g-wIs6a6xzjA6PQwKirhr4TM-SmI5xAGMbEfphZ8scFn2puz3zrNUDFL0l29KxD_BkIvcRu_30516bm34Jho3aWu2VGtPVJ00XR_7k_Yl9QwD-gKtxMIoE2z6K1PEDIs9iKjVrNO5p9MNHbdIPBeDc.khIPfNxeljVSDh8jlH5iKhkdu7RTBGbpPAqaTEKqeY8&dib_tag=se&keywords=%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E6%96%B9&qid=1722241279&sprefix=%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E3%81%8B%E3%81%9F%2Caps%2C221&sr=8-28
ひと味違う論文作成において肝心なこととは何か
社会学の視点から掘り下げて解説
「論文」とは謎解きの物語である! 社会学を手がかりに、そもそも論文とはなにかから説き起こし、研究プロセスにおける作法を実践的に解説。
===
論文を書くとき、気をつけなければならないことはなにか。論文は、どんな基準で評価されるのか。本書は論文の書きかたについて、社会学を中心に、研究プロセスにおける作法にそって解説する。著者自身の体験を手がかりとしながら、問題設定や社会調査、資料批判、図表の論理、注の役割、研究倫理など、論文作成において外せないポイントを掘り下げていく。論とはなにか、文とはなにか、そして書くとはなにか。「論文を書く」という現象それ自体の社会学的な考察であるとともに、新たな認識を自分で生み出すためのレッスンでもある。
【目次】
第1 章 論文とはなにか
第2 章 「論」と「文」の結合
第3 章 〈文〉で論ずることの厚み
第4 章 主題・問題意識・問題設定
第5 章 通念の切断と思考の運動
第6 章 観察と対話の組織化
第7 章 調査研究のさまざまな局面
第8 章 2 項対立のあしらいかた
第9 章 リレーショナル・データベースとしての社会
第10 章 「クダンの誕生」の経験をふりかえる
第11 章 リテラシーの発見
第12 章 読書空間のなかで書く
第13 章 コピペと引用の使いこなし
第14 章 見えかたをデザインする
第15 章 研究倫理の問題
第16 章 編集者として見なおす
あとがき
ちくま学芸文庫版あとがき
文献一覧
第1章 論文とはなにか:辞書に書いていない意味を考える
社会学における論文の書き方→社会学の研究の進め方
「論文を書く」という現象に歴史社会学的なアプローチを採る
論文とは何か。
社会学を学ぶ人が、書くことを求められている論文とは何か
それはいかなる形と実質を備えたものでなければならないか
目標としての成果物に要請されている基準から、自分のなすべき課題を考える実践は、方法的思考の第一歩である
論文とは何か
まず辞書を引く
冒頭で「〜〜とはなにか、広辞苑で調べてみると」と始まる論文はだいたい失敗
通り一遍な説明でなにかがわかったような気になってしまう→そこからの展開が生まれない
辞書は構成で網羅的な説明をしようという努力の結晶
中立的で標準的であるからこそ、見慣れた常識にからめとられて思考が身動きが取れなくなる
辞書で言葉の意味を調べること→手がかりとしては有効
論文を広辞苑で引いてみる
1. 議論する文。理義を論じきわめる文。論策を記した文。
2. 研究の業績や結果を書き記した文
ウィキペディアで論文を引いてみる
論文(ろんぶん英:paper)とは、学問の研究成果などのあるテーマについて論理的な手法で書き記した文章。
二つの意味が包括的に一つの文でまとめられている
まさにそこが落とし穴になる
さまざまな意味が生じてきた「歴史」が欠落してしまう→歴史社会学的な不満
「論文」を支える三つの形式・条件
1. 「論」と「文」との組み合わせである
2. 「問い」が明確に提示され、それに対する「答え」の案の是非が検討されている文
3. 他者によって審査される文章
第2章 「論」と「文」の結合
まず論文ではないものから考える
手紙や日記との違い
あて先となる他者の形式
具体的な他者ではなく、想像された虚構の公共的な他者
では、どんな言葉の実践が論文で行われているか?
「論」→筋道を立てて述べる、事の理非を主張する、というものの述べ方
論文はかつては議論文・論説文とも呼ばれていた
もろもろを考慮すると、「1つの問題に対して、もろもろの説の理非を検討する」という論理的構築と、「筋道立てて正しいと思うことを述べ、わからないことを明らかにする」という明晰さが必要
次に「文」
声と詩との対比
ウォルター・J. オング『声の文化と、文字の文化』
声の文化とは違い、適度に距離を持ち、冷静であればこそ可能な変化を呼び込む力がある
声の意味世界とは異なる新しい意味世界
冗長さはムダな繰り返しを添削して、筋道だった簡潔な構成を生み出す
身近な実感の累積に依存しての説得ではなく、事実の観察や証拠の提出にもとづいて論理による説明を組み立てる
対象と一体かしたり代弁したりする主張の力強さはではない、正しさの説得における冷静な距離、すなわち客観性というべきものの成立
「謎かけ」と「謎解き」
「樫の木はなぜ頑丈か」という謎掛けの形での問いは、樫の木は頑丈であるという理解を再確認するものでしかない
謎かけは「問い」の形式ではあるが、「疑問」の提出ではない。
既存の確信への回収がすでに予定されている問いかけ
ほんとうにその根拠を疑い、樫の木の強度を検証しようという動きははらんでいない
そうした思考の動きは、危険なものになりうる
オング「書くというシステムなしに、思考を分解する、つまり分析するということは、きわめて危険の大きい作業である」
それまで自分を支えていた常識を手放す必要がある→『勉強の哲学』きもくなる 謎かけはクイズであり、謎解きは探究解題と向かい合う主体の取り組み
論文とは、「論」と「文」との結合が生み出す分析の文体であり、謎解きの実践である
第3章 〈文〉で論ずることの厚み
さまざまなものが「文」である
文を読むことで立ち上がる主体
知るための文の機能と、「わからなさ」と対峙する手段としての文の機能
第4章 主題・問題意識・問題設定:問いを立てる(その1)
論文は「問いと答え」を持つ
「問い」とは何か?
興味関心を疑問形で提示すればそれで「問い」となるか?
「問い」は「問う」が名詞化したもの
単数形でその意味を捉えられるものではない
含意
主題・テーマ・論題
「あなた自身の関心」「論ずる主体の立場」→問題意識
問題設定(現実的な設定)
第5章 通年の切断と思考の運動:問いを立てる(その2)
「問いを立てる」ことそれ自体がダイナミックな動き
問いを立てるとは、ともかく疑問を出すことではない
質問の仕方によっては、思考が縛られ、認識を単純化してしまう恐れもある
問いは、立て方それ自体が一つの課題